トランスコアとは?トランスの仕組みからコアの形状、製品事例をご紹介!
近年、省エネルギー化や高効率化が求められる中、電子機器の心臓部とも言えるトランスコアの重要性が増しています。本コラムでは、トランスコア・トランスの基礎知識や形状、そして当社のトランスコア製造の特徴まで詳しく解説していきます。
トランスコアとは?
トランスコアとは、変圧器 (トランス) の内部で使われる磁性体のことです。変圧器は、電圧を変換する装置で、交流電流を異なる電圧に変換するために使用されます。
トランスコアは、通常、ケイ素鋼板や電磁鋼板、フェライトなどの磁性材料で作られており、1次コイルと2次コイルを磁気的に結合する役割を果たします。1次コイルに交流電流が流れると、コアに磁束が発生し、2次コイルに電圧が誘起されます。コアの磁気特性によって、変圧器の効率や性能が大きく左右されます。
トランスコアには、用途や特性に応じて、様々な形状や素材があります。一般的な形状には、E型、I型、U型、などがあり、電磁鋼板、ケイ素鋼板、アモルファス合金、フェライトなど様々な材料が使用されます。
変圧器(トランス)の仕組みと役割
変圧器(トランス)とは、電磁誘導作用を利用して交流電圧の値を変化させる装置です。この変圧器(トランス)の鉄心のことをトランスコアと呼びます。
基本構造は、トランスコアに一次コイルと二次コイルが巻き付けられています。一次コイルに交流電流を流すと、トランスコア内に磁束が発生し、二次コイルに電圧が誘導されます。一次コイルと二次コイルの巻数比を変えることで、電圧を自由に上げ下げすることが可能です。
変圧器の役割は多岐に渡りますが、大きく分けて電力系統における送電効率の向上と、様々な電子機器における回路動作に最適な電圧レベルへの変換が挙げられます。
このように、変圧器は私たちの生活に欠かせない様々な電気機器に利用されています。発電所や変電所で使われるものから、電子回路用の数センチサイズのものまで種類はさまざまですが、原理は共通しています。そして、それぞれの用途や求められる特性に応じて、最適な変圧器が設計・製造されます。
そして、これらの多様な要求に応えるために、 トランスコアの形状 が重要な役割を果たしています。
トランスコアは、変圧器の効率や性能を左右するだけでなく、大きさや重量にも影響を与えます。そのため、変圧器の用途や特性に合わせて、最適な形状のトランスコアを選択する必要があります。
トランスコアの形状
トランスコアには、用途や特性に応じて様々な形状があります。形状によって性能に優劣があるわけではなく、用途や要求に基づいて、最適なコアを選択する必要があります。代表的な形状としては、以下のようなものがあります。
EIコア
E型のコアとI型のコアを組み合わせた構造のトランスコアです。最も一般的な形状で、加工が容易でコストパフォーマンスに優れています。
EIコアは、2つのコアを組み合わせる構造であるため、コアの間に隙間ができ、漏れ磁束が発生します。また、中脚が角形であるため、電線が太いと密着性が悪くなり、電線を巻いた時の全長が長くなってしまいます。したがって、細い電線をまく小電力のトランスに使われることが多くなっています。
EEコア
EEコアは、E型のコアを2つ組み合わせた構造のトランスコアです。 EEコアはEIコアと同様に、中脚が角形であるため、太い電線を巻くと電線の密着性が悪くなり、電線の全長が長くなってしまいます。そのため、EEコアもEIコア同様、細い電線を巻く小電力のコイルやトランスに使用されることが多いです。
EEコアは2つのEコアを対称に組み合わせるため、EIコアに比べて磁気的なバランスが優れている場合があります。しかし、EEコアが常にEIコアより優れているわけではありません。最終的には、具体的な用途や要求に基づいて、最適なコアを選択する必要があります。
UUコア
UUコアは、U字型の磁心コアを2つ組み合わせた形状のコアです。この構造により、巻線間の絶縁が容易になり、 小型化にも貢献します。 また、コイルの巻線が容易になるという利点もあります。
UIコア
UIコアは、U字型とI字型の2つのコアを組み合わせた形状のコアです。 U字型のコアで磁束を囲い込むため、EIコアに比べて磁束漏れが少なく、高効率でになります。
EERコア
EEコアの中脚が円柱形となったコアです。現在では最もポピュラーな形状となっています。EEコアと同様に、2つのEERコアを組み合わせる構造であるため、コア間に隙間が生じ、漏れ磁束が発生します。しかし、中脚が円柱形であるため、電線の密着性が良く、電線を巻いた時の全長を短くすることができます。中電力以上のトランスにおいて用いられることが多くあります。
PQコア
PQコアは、EERコアをベースに、以下の改良を加えることで小型化を実現しています。
•円柱形の中脚の断面積を広くする
•外脚形状を、磁束の流れを考慮して不要な部分をカットする(中心部を薄くする)
これらの改良により、PQコアはEIコア、EEコア、EERコアよりも実装面積を小さくすることができます。
トロイダルコア
ドーナツのようなリング状の形をしたトランスコアです。別名リングコアとも呼ばれます。磁路が閉じており、磁束がコアの外に漏れにくい構造です。
そのため、電磁ノイズの発生を抑え、周辺回路への影響を最小限にできます。また、磁束漏れが少ないため、エネルギー損失が少なく、高効率な変圧が可能です。
当社のトランスコア製造の特徴とは
①求められる性能に応じた最適な積層方法のご提案
当社では主に4種類の積層方法に対応しております。それぞれにメリット・デメリットがあり、それに応じて用途も異なることが多くなります。しかし性能やロット数に応じてコアの最適な積層方法のご提案をいたします。
- 接着積層
- ピンカシメ積層
- ダボカシメ積層
- レーザー溶接積層
当社では上記4種の積層方法に対応しております。これらの積層方法の詳細はぜひ当社の別コラムをご覧ください。
>>>モーターコアの積層方法とは?積層方法の種類も徹底解説!
当社は、この中でも特に接着積層の高い技術力に評価をいただくことが多く、高精度なコアの製造に貢献しております。またカシメ積層も当社が得意とする技術の一つです。カシメ積層は、金型を製作するため、より量産に近い形での製品の提供ができ、さらに製品1個当たりの単価を安くご提供できます。
②トランスコアを1つの金型で2つ同時に型内積層でコストダウン!
特注シム製造センター. comでは1つの金型で同時に型内積層を行うことで金型にかかるイニシャル費をコストダウンすることができます。
当社ではコの字やTの字のほかに、EコアやIコア等同時に型内積層を行った実績がございます。形状に特徴があるトランスコアだからこそ、同時に型内積層が可能です。このような場合、金型のレイアウト設計にてバランスをとることが求められます。ダボの位置をどのように設計するかが重要です。
ダボの位置はお客様から指定いただく場合もございますが、当社から指定することも、またダボの位置変更についてご提案することもございます。
また、当社ではこのようなご質問をいただいたことがございます。
Q:コの字とTの字のトランスコアを、1つの金型で同時に型内積層にて製作していただきたいです。
Q:EコアとIコアがセットになったEIコアの製造はできますか?
順送プレスによる量産も可能なため、試作・量産ともに当社にお任せいただくことが可能です。
③当社開発「積層モーターコアブロック」からのワイヤーカット
当社では「モーターコアブロック 製造・販売サービス」を展開しております。
モーターコアブロックとは、電磁鋼板を接着積層したブロック状の素材です。コアの製造において、接着積層からワイヤーカットまでを一貫して内製化したいというニーズが高まっています。しかし、接着積層には高度な技術力が必要となるため、多くの企業がその工程を外部に委託しています。
当社では、長年培ってきた精密板金加工技術と、独自の接着積層技術を融合させることで、高品質なモーターコアブロックを提供しています。
さらに、このモーターコアブロックから、お客様の要求に応じた形状にワイヤーカット加工を行うことでトランスコアを製造することが可能です。既に積層されたものであるため、積層工程を短縮し、短期間で試作製造などに取り掛かることができます。
製品事例をご紹介!
EIコア
EIコアはEコアとIコアを組み合わせたコアの試作品です。
接着積層されたモーターコアブロックにワイヤーカットを行い製作しました。
精度を高めるために公差が厳しい部分には3回ワイヤーカットを行っています。
プレス加工と異なり、加工側面に酸化被膜が発生します。
EEコア
こちらはEEコアの試作品です。材質は 35A300または50A470、
サイズが 40×30×20mmのトランスコアです。
接着積層されたモーターコアブロックにワイヤーカットを行うことで製作しました。
UUコア
FA業界向けに試作製造したUUコアです。UUコアはUコアとUコアを組み合わせたコアです。
接着積層されたモーターコアブロックにワイヤーカットを行い製作しました。
公差は±0.05で、精度を高めるために公差が厳しい部分には3回ワイヤーカットを行っています。
プレス加工と異なり、加工側面に酸化被膜が発生します。
UIコア
このUIコアはサイズ 40×35×15mmの製品です。
接着積層されたモーターコアブロックにワイヤーカットを行い製作しました。
精度を高めるために公差が厳しい部分には3回ワイヤーカットを行っています。