シムリングのセミオーダーと完全特注の違い|選び方と相談前に決めておく6つの条件

「外径と内径は選べたのに、必要な板厚だけが選択肢に無い」。シムリングを手配しようとして、通販サイトのセミオーダー画面でこの状態になった経験をお持ちの方は少なくないと思います。セミオーダーは決められた枠の中であれば1枚から短納期で手に入る便利な仕組みですが、その枠は板厚・材質・形状・公差のそれぞれに設定されています。本記事では、既製品・セミオーダー・完全特注の3つが何によって分かれるのか、どの条件でセミオーダーの枠から外れるのか、そして完全特注を相談する際に決めておいていただきたい情報を整理します。私たち特注シム製造センター.com(株式会社飯島精機)が実際にいただいたご相談も交えて解説しますので、手配方法の判断材料としてご覧ください。
シムリングの「既製品・セミオーダー・完全特注」は何が違うのか
【定義】 セミオーダーとは、メーカーがあらかじめ用意した選択肢の組み合わせの中から寸法や材質を指定して注文する方式のことです。
この3区分を分けているのは、「どこまでを注文者が決められるか」という一点です。既製品は寸法表に並んだ品番から選びます。セミオーダーは、材質・板厚・外径・内径といった項目ごとに用意された選択肢を組み合わせます。完全特注は、図面またはご希望の寸法から製作方法を組み立てます。
| 区分 | 寸法の決め方 | 材質 | 板厚 | 形状 | 手配のしやすさ |
|---|---|---|---|---|---|
| 既製品 | 品番を選ぶ | 数種類 | 規格値のみ | 真円のみ | 最も速い |
| セミオーダー | 用意された範囲・刻みから指定 | 数種類 | 設定値から選択 | 原則は真円 | 速い |
| 完全特注 | 寸法・公差を指定して製作 | 鋼種まで指定可能 | 規格外も製作 | 異形も可能 | 相談と検討が必要 |
弊社にご相談いただく段階では、すでに既製品とセミオーダーを一通り探されているお客様がほとんどです。つまり完全特注は「最初の選択肢」ではなく、「前の2つで解決しなかったときの受け皿」として機能しています。ただし、すべてのご要望が完全特注でなければ実現できないわけではありません。寸法をわずかに見直すだけで既製品に収まる場合もあり、その場合は正直にそうお伝えしています。
>>シムリングとは?用途や加工方法、材質、厚さ、規格品や事例までご紹介!
セミオーダーのシムリングで指定できる範囲
セミオーダーの枠を正しく把握しておくと、完全特注に切り替えるべきかどうかの判断が早くなります。
材質は汎用鋼種の数種類から選ぶ
セミオーダーで用意されている材質は、使用量の多いものに絞られています。
鉄(SPCC相当)、ステンレス(SUS304)、真鍮、銅、アルミ、焼入鋼といった構成が一般的です。ステンレスであればSUS304、鉄であれば冷間圧延鋼板というように、各系統から1〜2鋼種が代表として選ばれています。
板厚は設定された値から選ぶ
板厚は連続した数値ではなく、飛び飛びの設定値として用意されています。
通販系メーカーの公開仕様を見ると、0.05mmから6.0mm程度までの範囲で、材質ごとに選べる板厚が決まっている構成が一般的です(各社の公開仕様に基づく目安であり、メーカーによって異なります)。板厚公差も板厚ごとに設定されており、たとえば板厚0.1mmで±0.03mm、0.05mmで±0.005mmといった水準です。
外径・内径には指定できる範囲と刻みがある
外径と内径は、上限・下限と最小の刻みが決められています。
外径2mmから250mm程度までを0.1mm刻みで指定できる、という形が代表的です。数量にも区切りがあり、100枚を超えると別途見積りになるケースが多く見られます。
溝や切欠きなどの追加工は別扱いになる
キー溝や切欠き、マーキング、表面処理は、寸法指定とは別の扱いです。
追加工の項目自体は用意されていても、オンライン注文の対象外で個別相談になる場合があります。形状に手を加えたい時点で、実質的には特注に近い進め方になると考えておくとよいと思います。
セミオーダーでは合わなくなる4つの条件
【ポイント】 板厚・材質・形状・公差のいずれか1つでも枠を外れると、セミオーダーでは注文が成立しません。
弊社に寄せられるご相談を振り返ると、外れるポイントは次の4つにほぼ集約されます。
板厚が設定値の間に入る、または極端に薄い
最も多いのが板厚です。
弊社には「板厚0.015mmと0.025mmの2種類、外径115mm・内径80mm」というコンプレッサの軸受調整用シムのご相談や、「厚み0.01・0.02・0.05・0.1mmの4種類」といったご依頼が実際に届いています。0.015mmや0.025mmという値は、セミオーダーの設定値の間に落ちる板厚です。5μm(0.005mm)のステンレス箔シムリングになると、そもそも選択肢として存在しません。
材質がSUS304や鉄以外
鋼種の指定が入ると、選択肢から外れます。
「錆に強いSUS316Lでお願いしたい」という特殊バルブ用のご相談は、その典型です。弊社ではSUS304のほか、SUS316、SUS316L、SUS430、SUS420J2、SUS329J4Lといったステンレス鋼種に加え、鉄・炭素鋼、銅、真鍮、リン青銅、アルミニウム、電磁鋼板まで対応しています。半導体製造装置のように耐食性が優先される用途では、材質の指定が先に決まっていることが多いと感じています。
形状が真円ではない
Dカット、キー溝、切欠き、複数の穴といった形状は、セミオーダーの標準形から外れます。
弊社が製作したFA装置用の丸シムでは、穴と外周部の両方に公差が指定されていました。このように公差の付いた穴が複数ある形状は、寸法を選ぶ方式では表現できません。
板厚公差や平面度が枠の公差より厳しい
寸法自体は範囲内でも、公差だけが合わないケースがあります。
弊社では両面研磨による仕上げで、板厚公差±0.01〜0.005mm、平面度0.01の調整に対応しています。既製品の公差では調整代が足りない、という場面でご相談をいただくことが多い領域です。
>>SUS製シムの板厚について|規格にない板厚の特注シム板への対応方法とは?
完全特注へ切り替えるかどうかの判断基準
セミオーダーの枠を外れることが分かったら、次は「どう作るか」の話になります。ここで効いてくるのが板厚と数量です。
板厚と数量から加工方法の候補が決まる
シムリングは、同じ形状でも板厚と数量によって適した加工方法が変わります。
| 条件 | 主な候補 | 判断時の注意 |
|---|---|---|
| 0.1mm未満 | エッチングを優先候補 | レーザーは対応外の目安 |
| 0.1mm以上2.0mm以下 | ワイヤーカット、エッチング、プレス、レーザー | 数量・公差・リング幅を合わせて確認 |
| 2.0mm超8mm以下 | ワイヤーカット、プレス、レーザー | エッチングは対応外の目安 |
| 1〜10個 | ワイヤーカット、レーザー | プレスは対応外の目安 |
| 1,000個以上 | エッチング、プレス | ワイヤーカット、レーザーは対応外の目安 |
この表は各条件を単独で見た目安です。鋼種、外径・内径、板厚公差、平坦度、バリ条件を組み合わせると候補が変わることがあります。
現合調整のために板厚違いをそろえる場合
調整用のシムは、1種類の板厚だけでは足りないことがよくあります。
同一形状で複数の板厚をそれぞれ別々に手配すると、管理工数がかかり、結果としてコストが上がります。弊社のワイヤーカットは異なる板厚を同時に加工できるため、まとめてご発注いただくことで一度に製作でき、コストダウンにつながります。
今後のリピート予定があるかどうか
初回だけで終わるのか、継続して使うのかで、選ぶべき加工方法が変わります。
プレスやエッチングは型や版を使う方法のため、初回に費用が発生する一方、数量とリピートが見込めるほど1枚あたりの負担が下がります。1,000個以下の単発であれば、ワイヤーカットのほうが総額を抑えられるケースが多くなります。だからこそ、初回数量だけでなく今後の予定数量も共有していただけると、ご提案の精度が上がります。
>>中途半端な板厚・サイズの特注シムは、どこに加工依頼する?
特注シム製造センター.comが実現する規格外シムリングの製作
【ポイント】 規格外のシムリングを形にするには、1つの加工方法にこだわらず、条件ごとに使い分ける体制が必要です。
弊社は、薄くてシンプルなシムを得意分野として製造しています。特注品では数量1,000個以下のご相談が多く、その多くはワイヤーカットで製作しています。
4つの加工方法を条件で使い分ける
弊社ではワイヤーカット、プレス加工、エッチング、両面研磨を保有し、条件に応じて選択しています。
プレス加工は外形およそ300mmまで、板厚はおよそ8mmまでが対応範囲です。エッチングは切断工程が発生しないためバリが生じず、板厚0.3mm以下では優位になります。肉厚の大きいシムではパイプ材からの切断加工が適する場合もありますが、工程数が増えて費用は高くなる傾向があります。
両面研磨で規格にない板厚をつくる
ご希望の板厚の定尺板がそもそも流通していない、という場面があります。
弊社では、まず板材の規格を確認し、規格が無い場合には両面研磨で板厚を調整します。板厚を後工程でコントロールできることが、規格外の特注シムや高精度スペーサーを製作できる理由です。この小回り対応力が、多くのご相談をいただけている理由の1つだと考えています。
バリレス精密プレスでバリ取り工程を減らす
シムは薄いため、バリが機能に直結します。
弊社は極限までバリを抑えた独自のバリレス精密プレスを保有しており、お客様側でのバリ取り工程の短縮につながります。ただし、すべての板厚・形状でバリがゼロになるわけではないため、許容できるバリの条件は事前にお聞かせください。
>>両面研磨による規格外板厚シム・高精度スペーサーの特注対応
特注シムリングの製作事例
実際に製作したシムリングを3点ご紹介します。守秘の関係で用途を伏せているものもありますが、寸法感の参考になれば幸いです。
ステンレス箔 極薄シムリング φ20×φ10×0.005mm
0.005mm(5μm)の極薄板厚をエッチング加工で製作しました。エッチングのため変形が少なく、精密な作業環境に適したシムです。
シムリング φ10×φ7×0.02〜1mm
ステンレス素材で、0.02〜0.05mmの板厚をエッチング加工により製作しました。釣り具のリールのガタつき調整などのメンテナンスに使われています。
FA装置用 丸シム(SUS304)
穴と外周部のどちらにも公差があったため、高精度なワイヤーカット加工で製作しました。複数枚重ねたブランク材を厚めの鉄材で挟み込み、加工液噴射による加工中のブレを低減させています。穴は4回に分けて加工し、仕上げ精度を高めました。
>>ステンレスシムリングの規格外サイズも対応可能!加工方法・製品事例もご紹介!
>>ベアリング用シムリングの役割・用途を解説!選定ポイントもご紹介
特注シムリングのご相談時にお伝えいただきたい6つの情報
【ポイント】 加工方法は寸法だけでは決まりません。用途と数量まで含めてお聞きすることで、最適な方法をご提案できます。
弊社では、ご要望に応じて用途を含めた詳細をヒアリングしたうえで加工方法を提案しています。次の6点が揃っていると、初回のご回答が具体的になります。
- 外径・内径・板厚と、それぞれの公差:どこに公差が必要かまで教えてください
- 材質と鋼種:SUS304以外をご希望の場合は鋼種名まで
- 今回の数量と、今後見込まれる数量:加工方法の候補が変わります
- 使用環境と用途:耐食性や耐熱性の要否を判断します
- 平面度・バリ・変形の許容条件:仕上げ工程の要否が決まります
- 希望納期と、そろえる板厚の種類数:まとめて製作できるかを検討します
すべてが決まっていなくても構いません。ここまでコラムを読んでいただいたあなたのように、「使用したい部品に合うシムがわからない」という段階でご相談いただくことも多く、その場合は寸法の決め方からご一緒に検討します。
規格外のシムリングのことなら、特注シム製造センター.comにお任せください
セミオーダーは、枠の中に収まる限りは合理的な手配方法です。枠から外れたときに立ち止まってしまうことが、設計や試作の遅れにつながります。弊社は、その外側を引き受けるための会社だと考えています。
「こんな形状のシムが欲しい」「規格にない板厚が必要になった」という段階で、お気軽にご相談ください。多品種・小ロットでのシム製作、試作にも対応しております。
よくある質問
Q. セミオーダーと完全特注は、どこで線を引けばよいですか?
A. 板厚・材質・形状・公差のいずれか1つでも選択肢に無ければ、完全特注の相談対象になります。
Q. 1枚だけの特注シムリングでも製作できますか?
A. 製作可能です。1〜10個の場合はワイヤーカットやレーザーが主な候補となります。
Q. 板厚だけが規格に無い場合、どのような方法がありますか?
A. 弊社では両面研磨で板厚を調整し、規格外の板厚に対応しています。まずは寸法をお知らせください。
