シム、スペーサー、ライナーの違いとは?
特注シム製造センター.comでは、毎月30件以上にも及ぶ特注シム製造のご相談を全国のお客様からいただいております。しかし中にはスペーサーやライナーと呼ばれる部品でご相談いただくことも多く、でも呼び方が異なっても形状やサイズは全く一緒というケースも多々ございます。
非常に紛らわしい、シム、スペーサー、ライナー、この違いはなんなのでしょうか?
今回は、シムの定義や種類から、シム、スペーサー、ライナーの違いについて、それぞれの最適な加工方法から、実際に当社で製作した特注シム・スペーサー・ライナーの製品事例まで、まとめてご紹介いたします。
シムリングとは
シムリングとは、ベアリングの調整やネジ部分の隙間穴埋めに使用されるリング型のシムを称します。
シムリングの「シム」とは、英語でshimと記され、詰め物やくさび等を意味します。この言葉の通り、シムリングは、機器の間に入れることで隙間が空かないようにし、あらかじめ機器の振動や騒音を防ぎます。
>>シムリングとは?シムリングの定義から選定ポイントまでご紹介
シムプレートとは?
シムプレートとは、産業機器や金型などにおいて水平バランスを保つために部品間にはめられるものです。機器における精密な高さ調整や固定として用いられます。
>>シムプレートとは?用途や加工方法、材質、厚さ、規格品や事例までご紹介!
シムの形状とその特徴
シムには様々な形状種類があり、それぞれの特徴と用途は以下の通りになります。
特徴 | 用途 | |
リング型 | ・リング形状
・リングの内径と外径の差によって分類される |
・ベアリング調整
・軸やパイプ形状の部品隙間を埋める(部品の形状に合わせてC型と使い分けられる) ・(フランジ型の場合)減速機 |
C型 | ・リングの一部が欠けた、文字の「C」のような形状
・リングの内径と外径の寸法の差やリングの欠けている部分の角度によって分類される |
・軸やパイプ形状の部品隙間を埋める(部品の形状に合わせてリング型と使い分けられる)
・シャフト端部の調整
|
コの字型 | ・文字の「コ」に似た形状
・縦横のサイズや切り欠けの大きさで分類される |
・機械の高さ、隙間調整
・ピローの高さ調整 ・部品の固定 |
プレート型 | ・四角形のシム
・縦横のサイズによって分類される |
・モーターの高さ調整 |
このように、リング型、プレート型それぞれでシムは分類され多くの種類があります。シムは部品の高さや隙間調整として用いられるため、調整したい部品に合わせてシムを選択していく必要があります。
また、例えば導電性が求められる際に銅や真鍮のシムを用いるというように、形状とセットで材質ごとにシムを選ぶことも重要です。
シム、スペーサー、ライナーの違いとは?
それでは、非常に紛らわしい、シム、スペーサー、ライナーの違いについてです。
シムとスペーサーの違い:用途に違いあり
まず、シムとスペーサーの違いについて。
用途が違いますが、シムとスペーサーに明確な定義は特にございません。
シムは高さ調節に用い、スペーサーは隙間(スペース)を確保するために使われますが、いずれにしても隙間の調整に使用される目には見えない重要な部品という点では、どちらも変わりません。
わかりやすくシムとスペーサーの違いをまとめると、以下の表の通りです。
材料の厚さ |
用途 |
|
スペーサー | 厚い | 傾きは変化させず、部品の位置調整のために使用。
主に重厚な機械や器具の固定に用いられる。 |
シム | 薄い | ベアリングやネジ部分の調整等、精度調整のために用いられる。 |
シムはスペーサーよりも使われる材料が薄いですが、厚さ0.01mm単位と高精度な板厚が要求されることが特徴です。また、スペーサーが部品の位置調整のために使用されることに対して、シムは精度調整のために使用されます。そのため、どのような機械で、何のために使用したいかによって、この両者の使い分けを行う必要があるということになります。
シムとライナーの違い:高さに違いあり
続いて、シムとライナーの違いについて。
シムとライナーは、両方とも隙間の高さ調節に用いられる部品ですが、両者の決定的な違いは調整する”高さ”です。
シムの方が調整する隙間が小さく、ライナーの方が調整する隙間は大きいという違いはあります。しかし用途は変わらないことから、シムとライナーを区別せずシムとまとめて呼ぶことも多くございます。
スペーサーとライナーの違い:厚さは大きめだが用途に違いあり
つまりスペーサーとライナーは、スペーサーは隙間確保に、ライナーは高さ調節に使用されるという点で異なりますが、厚さについてはシムとは異なりどちらも隙間や高さが大きくなる傾向にあります。
このように、シム、スペーサー、ライナーの違いは、辞書的な明確な定義はなく、実際に使われる現場においては混在されて呼ばれていることも多いのが現状です。
ちなみに、特注シム製造センター.comでは、シムの厚みについて寸法精度では±0.002~0.05mmの対応が可能です。
また、当社では金型に使用するものをライナーと呼んでおり、約20~150mmのライナー製造に対応しております。もちろん、板厚が厚くなるにしたがって厚みの精度が確保しにくくなります。
シム・スペーサー・ライナーの最適な加工方法とは?
特注シム製造センター.comでは、その名の通り、様々な規格外の特注シム・スペーサー・ライナーを製造しており、毎日多くのご相談をいただいております。
その加工方法も多くございますが、板厚やサイズ、材質、数量によって最適な加工方法がございます。当社でも、お客様のご要望されるシムについて、用途も含めて詳細をお伺いした上で、最適な加工方法にてシム製造することをご提案しております。
当社では、このように様々な特注シム・スペーサー・ライナーの製造に対応しております。
- ワイヤーカット
- プレス加工
- エッチング
- レーザーカット
- パイプ切断
例えばワイヤーカットは、下記の様なケースでは最適な加工方法となります。
- 板厚8mm以上のアルミ、真鍮、銅、チタン製の特注シム
- 数量が11000個以下という小・中ロットの特注シム
- 同一形状の複数の板厚のシム
については、ワイヤーカットでの加工が最適となります。
一方でレーザーカットは、下記の様なケースでは最適な加工方法となります。
- 300mm以上の大型・長尺シム
- 鉄製シム(真鍮製シム、チタン製シムも一部可)
- 厚さ2mm以上のシム(特に8mm以上)
- 材質に特に指定がない厚板シム
- 寸法公差や厚さ寸法が厳しい厚板シム
- 100個以下の小ロット特注シム
さらにエッチングは、下記の様なケースでは最適な加工方法となります。
- 板厚が特に薄い場合
- リピートでの生産が見込める場合
- 反りや変形・シワ、バリを避けたい場合
- およそ0.3mm以下の場合
- サイズが大きい場合(最大600×1300mm)
つまり、厚さが薄めのシムではエッチングが最適な加工方法となり、厚さが8mmのように大きくなるスペーサーやライナーではワイヤーカットやレーザーカットが最適な加工方法になるケースが多いと言えます。
一方、さらに肉厚が大きいシムの場合は、パイプ材からの切断加工が最適となる場合もございます。
たとえばお客様からは、「肉厚2.5mm、厚み12mmのシムリングの製造を検討していますが、どのような方法がよいでしょうか?」というご相談をいただいたこともございます。例のような肉厚2.5mmの場合は、同様の肉厚のパイプを切断加工してシムリングを製造することが最適なシム製造方法となります。
ただし上記の場合は、、肉厚2.5mmのパイプが保有在庫になかったため、肉厚が2.5mmよりも大きなパイプの切断加工後に、旋盤加工で肉厚調整することで対応いたしました。旋盤加工後は、研磨によって仕上げを行い、またお客様の用途に応じてメッキをする必要があります。
このようにパイプ材からの切断加工の場合は、工程数が多くなり費用も高くなる傾向にございます。そのため肉厚シム(ライナーと呼ばれることが多くなります)の場合は、お客様の使用用途をお伺いした上で最適なシム製造方法をご提案いたします。
シムプレートの厚み一覧
多くご相談をいただく板厚のシムプレートは、下記の通りです。単位はすべてミリです。
- 0.005
- 0.01
- 0.02
- 0.03
- 0.05
- 0.1
- 0.3
- 0.5
- 1.0
- 1.5
- 2.0
- 3.0
- 5.0
特に当社では、0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 1.0, 2.0mmの板厚のシムプレートセットに関して多くのご要望をいただいています。上記のような板厚のシムプレートを個別にご依頼いただくよりも、シムプレートセットとしてご依頼いただいた方が、たいていの場合はお安くなります。そのため当社では、特注シムの製造依頼をいただいた際は、個別の板厚での場合と、シムセットの2種類でお見積りをお出ししております。
もちろん上記より板厚が厚いスペーサーやライナーの特注加工にも対応しております。シムの場合は上記のような異なる板厚を組み合わせて高さ調整をすることが多いため、セット販売が多くなります。しかしスペーサーやライナーは高さや隙間が大きく、精度高く調整する必要がないことが多くなるため、単品で使用されるケースが多くなります。
特注シム・スペーサー・ライナーの製品事例をご紹介!
続いて、特注シム製造センター.comによる、特注シム・スペーサー・ライナーの製品事例をご紹介いたします。
SPHC製 丸シム・スペーサ・ライナー(レーザー加工、両面研磨、亜鉛メッキ)
こちらは機械装置向けの特注シム(スペーサ)です。鉄(SPHC)の素材をレーザー加工で加工しました。
3.8t±0.05という板厚と製作数量より見積を行った結果、ワイヤー加工や金型を製作した場合では価格が高価となるためレーザー加工を提案させて頂きました。
また一般のSPHCによる板厚3.80t±0.05の材料は入手する事が出来ないため、両面研磨を行う事で規格を満足することが出来ました。さらにこちらの製品はSPHC製のため、サビ防止のために亜鉛メッキ処理を施しました。
特注シム・スペーサー・ライナーに関するよくある質問
当社ではこれまでに様々な特注シム・スペーサー・ライナーに関するご相談をいただいております。下記はその参考例です。
「切断機用スペーサーで、φ250mm、厚み1.90mm、平面度0.01の高精度スペーサーの製造はできますか?」
>>当社では、φ250mm、厚み1.90mm、平面度0.01の高精度スペーサーの製造にも問題なく対応可能です。
ただし、厚みが1.9mmの材質はございませんので、そのような場合は両面研磨にて板厚1.9mmまで加工いたします。また平面度0.01のシムは非常に高精度となりますが、当社では精密な両面研磨加工が可能のため、問題なく対応可能です。
「保持炉ライナーの製造は可能ですか?」
>>当社では、保持炉ライナーの製作にも対応可能です。
保持炉ライナーについては、鉄またはステンレスでの製作を推奨しております。様々なサイズに対応できますが、300mm四方以上のような特にサイズが大きいライナーの場合は、当社ではレーザー加工での製作にて対応いたします。また保持炉ライナーでは数種類のライナーをご要望いただくことも多いですが、当社では数種類の板厚をラインナップしたライナーセットとしても製作可能です。
「厚さ0.1ミリでディーゼルエンジンのシリンダーライナーに使用するシム30枚の作成見積をお願いします。」
>>当社では、ディーゼルエンジン向けのシリンダーライナーシムも製作可能です。
枚数が30枚とのことなので、ワイヤーカットでの製作をご提案いたします。また厚さ0.1mmということではありますが、シリンダーでは細かなが調整が必要になるケースも多いかと思います。当社では、0.05mm、0.08mm、0.12mmなど、シリンダーに合わせて異なる板厚のシム製造にも対応しております。異なる板厚を同時にワイヤーカットで加工することで、費用を抑えたシムセットとしてもご提供可能です。
このほかにも、下記にて様々な特注シムに関する具体的にいただいたご質問とその回答を掲載しております。