エッチング加工の公差|板厚・材質・寸法別の考え方と見積前の確認条件

薄い金属部品をエッチングで手配しようとしたとき、「図面に何mmの公差を書けばよいのか」で手が止まってしまうことはないでしょうか。調べてみても「板厚の±10%」「素材厚さの±15%」と情報が分かれており、そのまま自社図面に落とすには不安が残ります。実際、公差の指示が実力とかみ合わないまま見積を依頼すると、材料手配の段階で差し戻され、往復に時間を取られることも少なくありません。
本コラムでは、エッチング加工の公差を「素材の板厚公差」「加工による平面方向の寸法公差」「測定条件」の3つに分けて整理し、板厚別・材質別・寸法別の目安と、見積を依頼する前に決めておきたい条件をご紹介します。あわせて、当社が公差のご相談にどう対応しているかもお伝えします。
エッチング加工の公差とは?
エッチング加工の公差とは、フォトエッチングで仕上げた部品の寸法が、図面の基準寸法に対してどれだけ振れてよいかを示す許容差です。結論から申し上げると、この値は板厚に強く依存し、加工条件や測定方法によっても変わるため、単一の数値で言い切ることはできません。
エッチングの公差が板厚に左右される理由
エッチング加工は、金属板の表面にフォトレジストで保護膜をつくり、露出した部分を薬品で溶かして形状を抜く加工です。刃物やレーザーのように一点を切り進むのではなく、薬品が露出面から全方向へ均等に溶かしていきます。
そのため、板の裏側まで溶かし切る間に、保護膜の下の部分まで横方向に溶け込みが進みます。これがサイドエッチングと呼ばれる現象で、板が厚いほど溶かす時間が長くなり、横方向の溶け込み量も増えていきます。エッチングの公差が「板厚の◯%」という形で語られるのは、この仕組みによるものです。
断面に残る突起(サイドエッジ)の大きさも板厚に比例します。ケミカルプリント社の技術資料では、片面エッチングで板厚の約40%、両面エッチングで板厚の0〜20%程度が目安とされています(株式会社ケミカルプリント、2026年9月参照)。
公差の目安が資料によって異なる点
公開されている目安には幅があります。ミスミのmeviyと匠の加工では「加工寸法精度は一般に板厚の±10%程度」とされており、板厚0.3mmであれば±0.03mmという計算になります。一方、平井精密工業では「一般的許容差は素材の厚さに対して±15%」と案内されています(いずれも2026年9月参照)。
同じウェットエッチングでも、対象材質、加工業者の設備、フィルム補正の有無によって実力値は変わります。したがって、記事や資料の数値はあくまで検討の出発点として扱い、最終的な公差は図面と加工業者との擦り合わせで決めるものとお考えください。当社でも、お客様の図面を拝見したうえで、その形状・板厚・数量で現実的に狙える範囲をご提示しています。
エッチング加工の公差を決める3つの要素
公差が決まらないときは、1つの数値で考えようとしていることが原因である場合がほとんどです。エッチング部品の公差は、性質の異なる3つの要素が重なって決まります。ここを分けて考えると、どこを詰めればよいかが見えてきます。
要素1:素材の板厚公差
厚み方向の精度は、エッチングでは基本的に変わりません。素材として仕入れた板の厚みが、そのまま製品の厚みになります。
ステンレス板の板厚公差は、流通材でおおむね次のような値です。
| 板厚 | 板厚公差 |
|---|---|
| 0.2mm | ±0.03mm |
| 0.25mm | ±0.04mm |
| 0.3mm | ±0.05mm |
| 0.5mm | ±0.05mm |
| 0.8mm | ±0.09mm |
| 1.0mm | ±0.1mm |
| 2.0mm | ±0.17mm |
※SUS304・SUS301の一般的な流通材の例です。
この値は、エッチングの精度がどれだけ高くても縮まりません。厚み公差を図面で厳しく指示しても、素材が対応していなければ成立しないという点が、薄板部品でつまずきやすいポイントです。
要素2:エッチングによる平面方向の寸法公差
外形寸法、穴径、内径、スリット幅といった平面方向の寸法が、エッチングの精度が問われる領域です。前述のとおり板厚に依存し、薄いほど小さい公差を狙えます。
なお、フィルム補正という技術を使えば、サイドエッチングによる溶け込み量をあらかじめ見込んで版のデータを調整できます。設計側で溶け込み分を引いておく必要はなく、要求寸法をそのまま図面に記載していただければ問題ありません。
要素3:測定条件
見落とされやすいのが測定条件です。公差は「どこを、どの方法で測るか」を決めて初めて判定できます。
エッチング部品の断面は、薬品で溶かした結果としてU字状の丸みを帯びます。同じ穴でも、板の表面側で測るか、最も狭くなる位置で測るかによって、読み取れる値は変わります。さらに0.01mm以下の極薄材では、測定時の押し当て圧で変形してしまうため、接触式の測定自体が適しません。
図面に公差を書く際は、測定基準面と測定方法(画像測定・投影機・三次元測定など)まで指示していただくと、検査での見解の相違を防げます。なお、図面に個別の公差指示がない寸法については、JIS B 0405:1991(普通公差―第1部)が適用されるのが一般的です。同規格は2025年6月20日に確認され、現在も有効な規格として運用されています。
板厚別に見るエッチング加工の公差の目安
ここからは、板厚ごとに狙える公差と制約を整理します。数値は外部の技術資料に基づく一般的な目安であり、実際の可否は形状と数量によって変わる点をご承知おきください。
| 板厚 | 寸法公差の目安 | 穴の最小径の目安 |
|---|---|---|
| 0.05mm以下 | テスト加工で決定 | テスト加工で決定 |
| 0.1mm | ±0.01〜0.02mm | 板厚の約110% |
| 0.15〜0.2mm | ±0.02mm | 板厚の約100〜110% |
| 0.25mm | ±0.03mm | 板厚の約100% |
| 0.5mm | ±0.05mm | 板厚の約100% |
板厚0.1mm以下の場合
エッチングが最も力を発揮する領域です。プレスやワイヤーカットでは反りやシワが出やすい厚みでも、力や熱を加えないエッチングであれば平坦度を保ったまま加工できます。
ただし、公差はどこまでも小さくなるわけではありません。匠の加工の資料では「±0.01mm程度で頭打ちになることが多い」とされています。薄くすれば無制限に精度が上がるわけではない、という点は設計段階で織り込んでおきたいところです。
当社の実績で申し上げますと、0.005mm(5μm)厚のステンレス箔シムリングでは、公差±0.001mm程度で製作しています。また0.01mm以下の極薄シムリングについては、長さ方向の公差0.1mm、厚み公差は素材メーカーの推奨値により0.001mm以下を目安としてご案内しています。
板厚0.1〜0.3mmの場合
エッチングの優位性が保たれる範囲です。当社でも、およそ0.3mm以下の薄いシムについてはエッチングが有利な工法になると考えています。
この範囲で注意したいのは、穴やスリットの最小寸法です。エッチングは板厚より小さい穴を抜くことが難しく、目安は板厚と同等から1.1倍程度、余裕をみるなら1.5倍程度とされています。細い残し幅も同様で、板厚の50〜100%が下限の目安です。細かい形状を詰め込んだ設計は、公差以前に加工可否の問題になります。
シムリングのような丸形状では、当社では板厚0.1mm以下の場合、内外径の公差レンジ0.1mm(±0.05、+0.1/0、0/-0.1など)でご案内することが多くなっています。
板厚0.3mmを超える場合
板厚が増えるほどサイドエッチングの影響が大きくなり、公差も緩くなります。0.5mmでは±0.05mm程度が目安です。断面の傾斜も目立つようになるため、板厚方向で寸法が変化する点を許容できるかが判断の分かれ目になります。
加えて、厚くなるほど溶かす量が増え、加工時間とコストが上がります。この領域では、プレスやワイヤーカットのほうが公差・コストの両面で有利になる場合があります。当社では板厚と数量、要求公差を伺ったうえで、エッチング以外の工法も含めてご提案しています。
材質・寸法・形状による公差の違い
「材質を変えれば公差は良くなりますか」というご質問をいただくことがあります。結論としては、材質が主に効いてくるのは公差そのものではなく、エッチングで対応できる板厚レンジです。寸法と形状については、ピッチ公差・角のR・ハーフエッチング深さという別の制約が関わります。
材質ごとの対応板厚の違い
ウェットエッチングで対応できる板厚は、材質によって異なります。
| 材質 | エッチング可能な板厚の目安 |
|---|---|
| ステンレス | 0.005〜2.0mm |
| 鉄・銅合金・アルミ | 0.01〜2.0mm |
| 42アロイ | 0.03〜1.0mm |
| コバール | 0.05〜1.0mm |
| 銀 | 0.01〜0.2mm |
| モリブデン | 0.05〜0.2mm |
ステンレスやチタンは切削では難削材に分類されますが、化学的に溶かすエッチングでは硬さが障害になりません。逆に、アルミのように柔らかくバリが出やすい材質でも、切断工程がないためバリが生じないという利点があります。硬いから公差が出ない、柔らかいから公差が出ないという発想が当てはまらないのが、エッチングの特徴です。
当社でも、チタン0.02mm厚の丸シムや、銅C1020の0.06mm厚シムリングなど、材質を変えた薄板の製作に対応しています。
ピッチ公差
多数の穴を配列する部品では、個々の穴径よりも穴と穴の間隔(ピッチ)の精度が効いてきます。ピッチ公差は距離が伸びるほど緩くなり、次のような目安が示されています。
| ピッチの距離 | 公差の目安 |
|---|---|
| 10mm以下 | ±0.005mm |
| 10〜100mm | ±0.01mm |
| 100〜300mm | ±0.01〜0.03mm |
板厚が厚くなるとサイドエッジが大きくなるため、ピッチの間隔は少し広めに設定する必要があります。フィルターやメッシュ状の部品を設計される場合は、穴径とピッチの両方で余裕を確認してください。
角のR(内角・外角)
エッチングでは、加工した部分の角に必ずRが付きます。薬品が全方向に回り込むため、直角のまま抜くことはできません。
目安は、内角が板厚の70〜80%、外角が板厚の50%以下とされています。板厚1.0mmであれば、内角には0.7〜0.8mm程度のRが付く計算です。角部を基準に組み付ける設計では、この丸みを見込んでおく必要があります。角を立てたい場合は、ワイヤーカットやプレスへの工法変更が選択肢になります。
ハーフエッチングの深さ
板を貫通させず、途中まで溶かして段差や溝をつくるのがハーフエッチングです。当社でもスリップリングや摩擦プレートの製作で採用しています。
ただし、深さは自由に指定できるわけではありません。貫通しない穴や溝の深さは、一般に板厚の60〜70%程度が目安とされています。設計上それより浅い段差が必要な場合は、事前にご相談ください。加工業者によっては、工夫により板厚の40%程度の深さを実現した事例も報告されています。
図面の公差と材料の公差が合わない場合の対応方法
見積の段階でよくいただくのが、「見積書に『板厚公差はJIS規格による』と書かれているが、これでは図面公差から外れるのではないか」というご質問です。
たとえば板厚0.5mmのシムで、図面公差が±0.02mmと指示されているケースを考えます。一般的な流通材料の板厚公差は±0.035mm程度ですので、材料をそのまま使えば図面から外れる可能性があります。しかも圧延加工の特性上、実際の板厚はプラス側よりもマイナス側、つまり薄めに仕上がる傾向が多く見られます。図面の下限マイナス0.02mmに対して、材料がマイナス0.025mmとなれば、厳密には公差外です。
なぜこうなるのか。厚み方向の精度は加工ではなく材料で決まるからです。この場合、当社からは2つの対応方法をご提案しています。
対応1:マイナス側の公差を緩和する
実際の材料特性に合わせて、マイナス側の公差を広げていただく方法です。標準の材料をそのまま加工できるため、製作コストを抑えられます。
薄板の厚み公差について、当社では現場での実用的な目安として次の値をご案内しています。
| 板厚 | 厚み公差の実用的な目安 |
|---|---|
| 0.005mm | ±0.0015mm |
| 0.01mm | ±0.002mm |
| 0.02mm | ±0.003mm |
| 0.05mm | ±0.005mm |
※一般的な流通材料における実力値です。材料メーカーの製造基準や生産ロットによって変動します。
用途が高さ調整であれば、上限側さえ守られていれば実用上支障がないケースも少なくありません。公差を左右対称に書かなければならない理由がないなら、非対称の指示に変えるだけでコストと納期が改善します。
対応2:厚めの材料から研磨で板厚を落とす
図面どおりの厚み公差をどうしても確保したい場合は、1段厚い材料を使い、研磨で目標厚みまで削り落とす方法があります。先ほどの例であれば、0.6mmの材料から0.5mmへ仕上げるという進め方です。
費用と加工時間はかかりますが、±0.02mmという厳しい厚み公差でも確実に確保できます。当社では両面研磨による規格外板厚シムの製作実績があり、用途とご予算に応じて工法を選んでいただけます。
>>両面研磨による規格外板厚シム・高精度スペーサーの特注対応
なお、材料の板厚公差そのものはJIS G 4305:2021(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)などの規格に基づきます。同規格は2025年10月20日に確認され、現在も有効です。
エッチング加工を依頼する前に確認したい5つの条件
公差の数値を先に決めようとすると、かえって話が進みません。当社にご相談いただく際は、次の5つを整理していただけると、初回のやり取りで実現可能な範囲をお伝えできます。
条件1:板厚と材質
すべての出発点です。板厚は公差の目安と最小加工寸法を、材質は対応できる板厚レンジを決めます。板厚が規格外の中途半端な寸法であっても、材料手配から対応できる場合がありますので、まずはご希望の数値をお知らせください。
>>SUS製シムの板厚について|規格にない板厚の特注シム板への対応方法とは?
条件2:厚み公差と平面方向の公差、どちらが重要か
厚みが効く部品と、平面形状が効く部品では、打つ手がまったく異なります。高さ調整用のシムであれば厚み、流路やフィルターであれば平面方向が主役です。両方を同時に厳しくすると、コストだけが上がってしまいます。どちらか一方に優先順位を付けていただくのが、最も効果の大きい見直しです。
条件3:測定箇所と測定方法
どこを測って合否を判定するかを決めておきます。極薄材で接触式の測定が使えない場合は、画像測定や投影機での判定になります。ここを決めずに公差だけを指示すると、納品後に判定基準で食い違う原因になります。
条件4:数量とリピートの有無
エッチングは版を使う加工です。1枚だけの試作か、継続的にご発注いただくかで、最適な工法が変わります。リピート生産が見込める場合は、版を使った量産のほうが安定した精度を得やすくなります。
条件5:バリ・平坦度・ハーフエッチングの要否
バリを避けたい、平坦度を確保したい、段差や溝が必要といった要求は、工法選定に直結します。エッチングは切断工程がないためバリが生じませんが、これらの条件が絡むと対応可否は組み合わせで決まります。図面に表れにくい要求ほど、早めにお伝えいただけると助かります。
特注シム製造センター.comだからこそ可能な公差からの工法選定
公差のご相談に対して当社がお応えできるのは、工法をエッチングに固定せず、要求公差から逆算して選び直せること、そして測定条件まで含めて検査できる体制があることの2点です。
エッチング以外の工法も含めた比較提案
当社では、エッチングのほかにワイヤーカット、レーザーカット、プレス加工、バリレスプレス、パイプ切断、旋盤加工、両面研磨といった加工方法を扱っています。
たとえばワイヤーカットの場合、一般公差は1カットで±0.1mm、精度を要する箇所は4カットで±0.01mm程度となります。ただしこれはワイヤー加工部の精度であり、厚さ精度は材料に依存します。またエッチングでは、当社の対応範囲として最大600×1300mmまでの加工が可能です。工法ごとに得意な公差の方向が違うため、図面を1枚拝見できれば、その部品で狙うべき工法をご提案できます。
10年前より構築している独自の生産管理システムで、過去のお問い合わせから加工データ、製品の履歴まで管理しております。蓄積したデータをもとに、材質転換や工法転換によるコストダウンのご提案もいたします。
検査測定表を添付した納品体制
当社では、高精度CNC三次元測定器(東京精密 XYZAX AXCEL)、画像寸法測定器(キーエンス IM-6700/6225)、三次元画像測定器(ミツトヨ QS-L1020Z)、輪郭形状測定器、デジタルマイクロスコープ、投影機などを保有しています。
薄板部品では、接触式で測れない寸法を画像測定器や投影機で確認するなど、測定対象に応じて手段を選ぶ必要があります。当社では加工手配後に社内の生産システムへ登録して工程設計を行い、検査後は必ず検査測定表を添付してお客様へお送りしています。公差をどの方法で確認したかが記録として残るため、受け入れ検査での判断もしやすくなります。
エッチング加工による特注シムの製品事例をご紹介!
続いて、当社がエッチング加工で製作した特注シムの事例をご紹介いたします。
ステンレス箔 極薄シムリング φ20×φ10×0.005mm厚(5μm)
0.005mm(5μm)のSUS304製極薄シムリング(φ20×φ10)をエッチング加工で製作した事例です。事例ページで確認できる公差は±0.05mmで、エッチングによる変形の少ない仕上がりが特徴です。
シムリング φ10×φ7×0.02〜1mm
さまざまな用途に活用できる丸形状のシムです。ステンレス素材で、0.02〜0.05mmの板厚にエッチング加工により製作しました。釣り具のリールのガタつき調整など、メンテナンス用途にも使われています。
チタンシム 0.02mm厚
0.02mm厚の特注丸シムです。チタン素材をエッチング加工により製作しました。半導体製造装置向けの用途でご相談をいただいています。
スリップリング、摩擦プレート
1.0mm厚のアルミ合金素材による部品です。段差と溝はハーフエッチングにより形成し、多数の細いスリットを均等な配列で加工しました。エッチングのため変形が少ない仕上がりとなっています。
特注シム・積層コアなら「特注シム製造センター.com」まで!
今回は、エッチング加工の公差について、素材の板厚公差・加工の寸法公差・測定条件の3つに分けてご紹介いたしました。
「図面に書く公差が決まらない」「材料公差と図面公差が合わずに困っている」「測定方法まで含めて相談したい」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。図面がない場合でも、仕様やご要望を伺いながら、板厚・材質・工法の選定からお手伝いいたします。
また、特注シム製造センター.comでは「シム」の製造・加工を行っております。当社では薄くて、シンプルなシムを得意としており、シムの試作も承っております。
多品種の材質、小ロットでのシム製作でお悩みの方は、ぜひ特注シム製造センター.comまでお問い合わせ下さい。

