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技術コラム

既存の金型・原版を活用した特注シムリング製作|流用できる条件と確認方法

特注のシムリングをお見積りすると、製品代とは別に「版代」や「金型代」が並ぶことがあります。数十枚しか必要ないのに初期費用が乗ってくると、社内で判断しづらくなります。

ただし、シムリングの加工方法のうち、道具を新しく作る必要があるのはエッチングとプレス加工の2つだけです。しかもプレス金型は、数量がまとまらなければそもそも作りません。

本コラムでは、初期費用がどんな条件で発生するのか、当社がすでに持っている原版や金型に当てはまると何が変わるのか、当てはまらなかったときにどう考えればよいのかを、当社の判断基準に沿って整理します。

シムリングの見積で「初期費用」が出るのは、どんなときか?

【ポイント】 初期費用が発生するのは、形状を写し取るための道具を新しく作るときだけです。

シムリングの加工方法には、道具を使うものと使わないものがあります。どちらに当たるかで、見積の構造そのものが変わります。

道具が要る工法と、要らない工法がある

当社が特注シムの製造で使う主な工法を、初期費用の観点だけで並べると次のようになります。

加工方法 必要な道具 初期費用
ワイヤーカット なし 発生しない
レーザーカット なし 発生しない
エッチング 原版(版) 版代が発生する
プレス加工 金型 金型代が発生する

ワイヤーカットとレーザーカットは、データをもとに材料を直接切り抜く方法です。専用の道具を用意しないため、1枚であっても初期費用はかかりません。特注シムということもあり、当社では数量が1,000個以下というご相談が多く、その多くをワイヤーカットで製作しています。

一方、エッチングは形状を材料に焼き付けるための原版が、プレス加工は材料を打ち抜くための金型が必要です。初期費用はこの2つから生まれます。

>>シムの加工方法一覧をご紹介!

道具は形状ごとに一度だけ作るもの

原版も金型も、その形状専用の道具です。外径・内径・形状が決まれば一つ作り、以降は同じ形状を製作するたびに使い回します。つまり初期費用は、製作枚数ではなく形状に紐づく費用だとお考えください。

だからこそ、同じ形状の道具がすでに存在していれば、その費用は発生しません。ここが本コラムの主題になります。

小ロットのプレス金型代は、そもそも心配しなくてよい

「少量だと金型代を負担することになるのでは」というご心配をよくいただきます。しかし小ロットのご相談で、プレス金型の費用をご負担いただくことはほとんどありません。

金型は数量がまとまってから作るもの

プレス加工は、金型さえできれば高速で打ち抜けるため、量産で本領を発揮する工法です。逆に言えば、数量が少ないうちは金型代を製品単価に乗せきれません。

当社では1,000個が一つの目安です。1,000個以下の場合は金型製造コストが高くなってしまうケースが多くなるため、ワイヤーカットやエッチング等の別方法によるシム製造を推奨しております。小ロットのご相談に対して、当社から金型を新しく作るご提案をすることは基本的にありません。

>>プレス加工によるシム製造が最適な場合とは?

所有している金型に類似サイズがあれば、金型製作から始めずに済む

ただし例外があります。当社はシムリングのプレス金型を所有しており、ご要望の寸法に近いものが手元にあれば、金型製作から始める必要がなくなります。弊社所有のシムリングの金型に類似サイズがない場合は、プレス金型製作からの対応になるため、あらかじめご相談させていただいております。

公開している製品事例でいえば、シムリング φ30×φ26×0.1~0.5mm は、一つの型で0.1mmから0.5mmまでの板厚を製作した例です。すでにある型に寸法が合えば、金型代を考えずにプレス加工の精度を使えます。

金型を作る場合も、内製と単発金型で費用を抑える

数量がまとまり、金型を作る判断になった場合も、当社は金型の設計から製作までを内製しています。外注する場合と比べて仕様の伝達ミスや手戻りが減るため、金型費と納期の両方を抑えられます。

また試作段階では、順送金型ではなく単発金型を選ぶことでコストメリットが生まれます。当社では精度は順送金型も単発金型も変わりませんので、製品のサイズと数量に応じて使い分けています。

>>金型を内製しているプレス加工会社に製造を依頼するメリットとは

小ロットで初期費用が効いてくるのは、エッチングの原版

では、少量の特注シムリングで初期費用が問題になるのはどんな場面でしょうか。ほとんどの場合、エッチングを選ばざるを得ない条件のときです。

薄いほど、少量でもエッチングになる

板厚が薄くなるほど、ワイヤーカットやプレス加工では反りや変形、シワが発生しやすくなります。サイズにもよりますが、およそ0.3mm以下ではエッチングが優位となり、0.005mmといった極薄の材料でも平坦度を維持したまま加工できます。

大型・長尺のシムも同様です。ワイヤーカットやプレス加工では対応が困難となるため、エッチングにて対応いたします。当社では最大600×1300mmまで製作可能です。

>>エッチング加工によるシム製造が最適な場合とは?

数量が少ないほど、原版代の重みが増す

エッチング加工では、製品の形状を材料に焼き付けるための原版を最初に作成する必要があり、その分の初期費用と期間が発生します。原版代は形状に対して一度だけの費用ですから、数量が多ければ1枚あたりの負担は軽くなります。300個というまとまった数量であれば、原版の初期費用を製品単価に分散できるため、品質とコストのバランスが取れた選択肢になります。

問題は、10枚や50枚といった極小ロットの場合です。プレス加工のように「数量が少ないから別の工法にする」という逃げ道が使いにくく、原版代がそのまま単価に効いてきます。

>>厚さ5ミクロンの極薄シムリングはどうやって加工する?

既存の原版・金型に当てはまると、何が変わるか

ここで効いてくるのが、すでにある原版です。ご指定の形状に合う原版を当社が保有していれば、新しく作る必要がないため、原版代は発生しません。

同じ原版で板厚違いを展開できる

エッチング加工の大きな特徴として、製品の形状を焼き付けるための原版を作成すれば、その同じ原版を使って異なる厚みの材料を加工することが可能です。外径12φ・内径3φで厚さ0.005mmと0.003mmの2種類をご希望いただいた際も、共通の原版を使用して製作できるため、初期費用を抑えられるとご案内しました。

現合で調整するために板厚を何種類かそろえたい、という用途は特注シムでは珍しくありません。外径と内径が同じであれば、板厚の種類を増やしても原版は増えません。

寸法をわずかに寄せると、既存の原版に当たることがある

「特注寸法だから、既存の原版に当たるはずがない」と思われるかもしれません。ただ実務では、機能を決めている寸法は一部だけ、というケースが多くあります。

過去のお客様のシム使用用途によっては、内径がΦ7に限定されず、たとえばΦ8など少し大きいサイズでも問題なく機能するケースが多数ございました。当社では過去に作成した類似サイズの原版をいくつも保管しておりますので、寸法にある程度の許容範囲があれば、既存の原版を流用できるサイズをお選びいただくことで、新たな原版の作成費用を削減できます。

ただし、はめ合いや位置決めに関わる寸法は動かせません。シャフトに通す内径、座ぐりに収める外径など、相手部品と接する側は設計値のまま進める必要があります。

だから寸法は「どこまで動かせるか」とセットで伝える

なぜ許容幅が重要なのか。照合できる範囲が決まるからです。

外径40mm・内径35.6mm・板厚0.3mmという情報だけでは、当社が持っている原版や金型と完全に一致するかどうかしか判定できません。ここに「内径は±0.3mmまで動かせる」「外径は公差不問」という一言が加わると、照合できる候補が一気に広がります。

材質や数量、公差なども含めたご相談時の情報については、別のコラムで整理しております。本コラムでは、寸法に許容幅を添えていただく点だけ押さえていただければ十分です。

当てはまらなかったときの、初期費用の考え方

照合しても合う原版・金型がなかった場合はどうなるのか。初期費用のかからない工法へ切り替えるか、数量で回収するかの二択になります。

初期費用をかけない道に切り替える

先に整理したとおり、ワイヤーカットとレーザーカットには道具が要りません。数量が1,000個以下で、板厚や形状の条件が合うのであれば、ワイヤーカットで製作するほうが総額を抑えられます。当社のシムの多くは、この判断でワイヤーカットによる製造となります。

さらにワイヤーカットでは、異なった板厚の素材を重ねて同一形状に加工しますので、同じ形状で複数の板厚のシムが製作可能です。板厚ごとに手配すると管理工数がかかりますが、まとめてご発注いただくことで一度に製作でき、結果としてコストダウンにつながります。

>>ワイヤーカットによるシム製造が最適な場合とは?

数量が見込めるなら、作って回収する判断もある

一方で、今後も同じ形状を繰り返し使う見込みがあるのなら、原版や金型を作ってしまったほうが結果的に安くなります。版下(原版)を保管しておけばリピート時に迅速な対応が可能ですし、2回目以降は初期費用が発生しません。

判断の分かれ目は、初回数量ではなく累計数量です。ご相談の際に今後の予定数量まで共有いただけると、道具を作るべきか避けるべきかをその場でご提案できます。

特注シム製造センター.comが既存の原版・金型を照合できる理由

当社が「既存の原版・金型に当たるかどうか」をその場で確認できるのは、過去の道具と加工データの両方を残しているためです。

過去の原版・金型を保管している

エッチングの版下(原版)は保管しており、リピート時に迅速な対応が可能です。プレス加工についても、シムリングの金型を所有しております。

加えて当社では、独自の生産管理システムにより過去のお問い合わせデータ、加工データ、製品の履歴管理を行っております。そのため既存品や類似品があれば、最短1時間での見積対応が可能です。「この寸法で作れますか」というご相談に対し、過去の実績から当たりを付けて回答できるのは、この蓄積があるからです。

なお、エッチングによるシム製作は協力会社様にて行っております。特注シム製造の独自の加工ネットワークを保有している点も、当社がまずご相談先として選ばれる理由の一つです。

当てはまらない場合は工法転換で提案する

既存の道具に当たらなかったとしても、そこで終わりにはいたしません。当社では、レーザーカットからワイヤーカットへの工法転換、ワイヤーカットからエッチングへの工法転換、もしくは金型製作によるプレス加工といった工法転換をご提案しております。

過去には、公差を±0.1から±0.15に下げていただいたことでコスト削減につながったケースもございました。寸法だけでなく、公差や材質まで含めて調整できる余地を一緒に探すのが当社の進め方です。

>>当社の技術提案事例はこちら

既存の原版・金型を活かした特注シムリングの製品事例

続いて、既存の型や原版を活かして製作した特注シムリングの事例をご紹介いたします。

シムリング φ30×φ26×0.1~0.5mm

こちらは、さまざまな用途に活用できる丸い形状のシムです。ステンレス素材です。0.1~0.5mmの板厚に対しプレス加工により製作しました。一つの型で複数の板厚を展開した事例となります。

>>詳細はこちら

シムリング ステンレス φ10×φ7×1t

こちらは、1mmの板厚にプレス加工により製作したシムリングです。ステンレス素材です。バリレスプレスシムのため変形、バリが少ない仕上がりになっています。釣り具などリールのガタつき調整などのメンテナンスに最適です。

>>詳細はこちら

シムリング φ10×φ7×0.02~1mm

こちらは、同じ外径・内径でありながら、0.02~0.05mmの板厚にエッチング加工により製作した事例です。ステンレス素材です。エッチングのため、変形が少ない仕上がりになっています。同じ寸法でも、板厚の領域によって適した工法が変わることが分かります。

>>詳細はこちら

シムリング 銅 φ20×φ15×1t

こちらは、丸い形状のシムです。銅素材です。1mmの板厚にプレス加工により製作しました。バリレスプレスシムのため変形、バリが少ない仕上がりになっています。

>>詳細はこちら

>>特注シムリング事例はこちら

よくある質問

Q. 小ロットのシムリングでも、プレス金型の費用はかかりますか?

A. 基本的にかかりません。1,000個以下では金型を新たに作らず、ワイヤーカットやエッチングをご提案しております。

Q. 板厚だけが違う場合、原版は作り直しになりますか?

A. なりません。同じ原版で異なる厚みの材料を加工できます。外径と内径が同じであれば板厚の種類は増やせます。

Q. 既存の原版・金型に合うものがなかった場合はどうなりますか?

A. 初期費用のかからないワイヤーカット等へ切り替えるか、累計数量を踏まえて道具を作る判断をご提案いたします。

特注シムリングの初期費用でお悩みなら特注シム製造センター.comへ

今回は、特注シムリングの初期費用が発生する条件と、既存の原版・金型を活かして抑える方法についてご紹介いたしました。

「少量だから金型代がかかると言われた」「版代が高くて社内で通らない」とお困りの方は、外径・内径・板厚に加えて、それぞれどこまで動かしてよいかをお知らせください。当社の保有する原版・金型と照合したうえで、最適な工法をご提案いたします。

特注シム製造センター.comでは、ワイヤーカット、プレス加工、エッチング、レーザーカットなど多様な加工方法の中から、お客様の数量と仕様に合わせた製造方法を選定しております。まずはお気軽にご相談ください。

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