ステンレスシムリングの規格外サイズも対応可能!加工方法・製品事例もご紹介!
ステンレスシムリングはベアリングの調整、機械装置の精度調整など、目に見えない部分で、機械の稼働を支えています。
多くの場面では、SUS304製のシムリングが使われており、当社でもSUS304での製造依頼を多数いただいております。しかし、耐食性など、使用用途に合わせて最適なステンレス鋼を選択することで、安定した機械の稼働につながります。
本記事では、ステンレスシムリングの特徴や用途、数量などに合わせた最適な加工方法を解説しております。製品事例もご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
シムリングとは?
シムリングとは、リング状の形をした薄い板のことです。機器や金型の隙間に挟んで高さを精密に調整するために用いられます。シム板とも呼ばれ、機械のガタつきを防ぎ、水平バランスを保つ重要な役割を果たします。
シムリングは、円形上のパイプやバルブ、ベアリング、ハブなど、あらゆるものの長さ・高さ・隙間精度を調整するために使われています。
また、同じような機能を持った部品として、スペーサーがございます。
シムとスペーサーはどちらも隙間を埋めるために使用されますが、用途に違いがあります。
•シム(シムリング) :主に高さ調整に使用
•スペーサー :主に隙間の確保に使用
ただし、明確な定義はなく、シムの方がスペーサーよりも薄い材料が使用され、より高精度な板厚が要求される傾向があります。
>>シムリングとは?用途や加工方法、材質、厚さ、規格品や事例までご紹介!
ステンレスシムリングの特徴
ステンレスは、シムの材質の中でも高価ではありますが、材質として最も多く使用されています。
ステンレス鋼の特徴として強度が強く、耐食性に優れており、錆びにくいです。
また、耐熱性にも優れているなどの特徴があります。
これらの特性から、ステンレス製のシムリングは多くの機械や装置で使用されています。特に耐食性が求められる場面ではSUS316Lが選択されることもあります。
ステンレスの種類と特徴
SUS304
汎用性が高く、入手が容易なため、特注シム製造で最も一般的に使用されます。
SUS430
0.3mm~3mmまでの板厚であれば調達可能ですが、0.1mm厚の板材は流通量が少ないため、事前に相談することが推奨されます。
SUS316
錆が発生しやすい水回りで使用されることが多く、耐食性が求められる環境に適しています。
SUS316L
SUS316よりも耐食性に優れた素材で、半導体の分野など、特に耐食性が求められる場面で用いられています。
SUS420J2
ステンレス鋼の中でも特に硬度が高く、ワイヤーカット加工での製造に適しています。
SUS329J4L
市場での流通量が少ないため、材料支給による製造が一般的です。
メーカー品にはSUS304製のシムリングが多く、当社でもSUS304での製造依頼を多数いただいております。しかし、材質によってシムリングの性能も変化します。耐食性など、使用用途に合わせて最適なステンレス鋼を選択することで、安定した機械の稼働につながります。
ステンレスシムリングの用途
ステンレスシムリングは、シムの素材としては様々な機械や装置の隙間調整やバランス調整に使用され、機械装置の精度を保つ上で重要な役割を果たします。
具体的な使用例
・ベアリング調整
・ネジ部分の隙間穴埋め
・シャフトの高さ調整
・機械部品の精密な構成保持
・品質確保
具体的な機械
・産業機械
・光学機械
・食品機械
・医療機械
・工作機械
・半導体製造装置
多くの場合、高さ、隙間調整のために板厚が最も重要となります。このため適切な板厚のシムを用意、もしくは異なる板厚の複数のシムを用いて現合にて調整が行われます。
特注ステンレスシムリングの加工方法
ステンレスシムリングの最適な加工方法は、板厚、サイズ、材質、数量によって異なります。特注シム製造センター.comでは、顧客の要望に応じて、用途を含めて詳細をヒアリングした上で、最適な加工方法を提案しています。
主な加工方法について、比較表と各方法の詳細を説明します。
方法 | 特徴 | 最適な場合 |
ワイヤーカット | 異なる板厚でも同時加工可能 | 数量1000個以下の 金属シム、特に通電材料 |
プレス加工 | 大量生産に最適 | 数量1000個以上 |
パイプ切断加工 | 肉厚が大きいシムに最適 | 肉厚シム |
エッチング | 箔シムと呼ばれるような薄い板厚のシムに最適、バリなし | 板厚0.3mm以下、 リピート生産 |
両面研磨仕上げ | 規格外の板厚(公差±0.01~0.005)や平面度0.01の調整が可能 | 規格外のステンレスシムリング |
ワイヤーカット
当社のシムの多くは、ワイヤーカットによる製造となります。
特注シムということもあり、数量が1000個以下というお見積りやご相談が多くなっています。そして多くの場合は金属製シムとなり、通電材料の場合はワイヤーカットで容易にシム製造をすることができるようになります。
またワイヤーカットでは、異なる板厚でも同時に加工可能です。同一形状の特注シムの製作を行う場合、異なった板厚ごとそれぞれ手配すると、どうしても管理工数がかかってしまい、コストが高くなってしまいます。そのため、同一形状の複数の板厚のシムをご要望の場合は、まとめてご発注頂くことで、一度にまとめてシム製作が可能となり、結果としてコストダウンにつながります。
プレス加工
プレス加工によるシム製造は、特に数量が必要な場合に最適な加工方法となります。逆に1000個以下の場合は、金型製造コストが高くなってしまうケースが多くなるため、ワイヤーカットやエッチング等の別方法によるシム製造が推奨となります。
またサイズと板厚についても制限がございます。サイズに関しては、当社のプレス加工機のサイズによる制限があり、およそ300mmまでのシムであればプレス加工によるバリレスプレスシムに対応可能です。さらに板厚については、こちらもプレス加工機のトン数による制限となりますが、約8mmまでのシムであればプレス加工にて製造することができます。
パイプの切断加工
肉厚が大きいシムの場合は、パイプ材からの切断加工が最適となる場合もございます。パイプ材からの切断加工の場合は、工程数が多くなり費用も高くなる傾向にございます。そのため肉厚シムの場合は、お客様の使用用途をお伺いした上で最適なシム製造方法をご提案いたします。
また、特に特注サイズが求められる薄い板厚のシムリングにはエッチングのような方法が適しています。
エッチング
エッチングは、シムの板厚が特に薄い場合に効果的な製造方法となります。またリピートでの生産が見込める場合も、プレス加工の金型と同様に、エッチングも版を用いた量産の方が安定した高精度薄板シムの製造が効果的になります。
またサイズにもよりますが、およそ0.3mm以下の場合はエッチングが優位となります。またエッチングによるシム製造の場合は、切断工程が発生しないため、バリも生じないことも特徴の1つとしてあげられます。
>>エッチングによるシム製造が最適な場合とは?
その他、ステンレスのシム製造においては、規程の板厚の定尺板が調達可能かどうかが重要です。当社で調達実績のあるステンレスの板材については、下記コラムをご覧ください。
>>ステンレス板の板厚・板厚公差・定尺寸法まとめ
規格品ではラインナップがない板厚の特注シムの場合も当社では両面研磨によって板厚調整が可能です。
両面研磨仕上げ
両面研磨による仕上げ加工を行うことで、規格外のステンレスシムリングの特注対応を行っております。規格にはない板厚や平面度の特注シム製造が可能な小回り対応力が、当社に数多くのご相談をいただけている理由の1つだと考えております。
>>両面研磨による規格外板厚シム・高精度スペーサーの特注対応
実際にいただいたステンレスシムリングのご相談
ここでは、特注シム製造センター. comに実際にいただいたステンレスシムリングのご相談、お問い合わせと当社の回答を紹介いたします。公差、対応領域などご参考になれば幸いです。
Q:外径Φ107 内径Φ99と、外径Φ73 内径Φ65のステンレス製シムリングについて、厚み0.01,0.02,0.05,0.1mmでお願いしたいのですが、内外径公差はどのくらいですか?
Q:ステンレス箔 極薄シムリング φ20×φ10×0.005mm厚(5μm)について、公差はどれくらいでしょうか。また、5枚、10枚の時のおおよその価格と納期についても教えてください。
Q:特殊バルブ用の特注シムリングの製造はできますか?錆に強いSUS316Lにてお願いしたいです。
Q:Φ40のSUS製のシムリングの製造はできますか?
特注シム製造センター.comでは、顧客の要望に応じて、用途を含めて詳細をヒアリングした上で、最適な加工方法を提案しています。
特注シム製造センター. comが手掛けるステンレスシムリングの特徴とは?
特注対応力と多様な加工方法
規格外の特注シムに特化しており、顧客の細かなニーズに対応できます。特注シムリングのポイントとしては、規格外の内径・外径、材質、板厚などがございます。当社では、ワイヤーカット、プレス加工、エッチングなど、多様な加工方法を自社で保有しており、材質やシムリングの使用場面、数量、納期に合わせて最適な加工方法にて製造いたします。
メーカーでは規格品がない多様な材質・板厚への特注対応
市場には多様なサイズ、板厚のステンレスシムリングの規格品が存在しており、特にSUS304製のシムリングは他社メーカーでも豊富なラインナップがございます。
しかし、当社では、SUS304以外のステンレス鋼からの特注シムリング製造も承っております。ステンレスをはじめ、鉄、銅、真鍮、リン青銅、アルミニウム、電磁鋼板など、多様な材質に対応可能です。
また、特に高精度な調整が求められるシムリングの場合は、板厚の観点で規格品ではカバーできないことがあります。そもそもご希望の板厚の規格の板材が存在しない場合もございます。
このような場合、両面研磨によって板厚の調整ができます。当社では、まず板材の規格を確認し、規格がない場合には両面研磨で板厚を調整します。両面研磨によって板厚をコントロールすることで、特注板厚シムや高精度スペーサーの製造を可能にしています。
>>SUS製シムの板厚について|規格にない板厚の特注シム板への対応方法とは?
ステンレスシムリングの製品事例をご紹介
シムリング φ10×φ7×0.02~1mm
こちらは、さまざまな用途に活用できる丸い形状のシムです。
ステンレス素材です。0.02~0.05mmの板厚にエッチング加工により製作しました。
エッチングの為変形が少ない仕上がりになっています。
釣り具などリールのガタつき調整などのメンテナンスに最適です。
ステンレス箔 極薄シムリング φ20×φ10×0.005mm厚(5μm)
こちらは、0.005mm厚のステンレス箔シムリングです。
0.005mm(5μm)の極薄板厚に対しエッチング加工により製作しました。
エッチングの為変形が少ない仕上がりとなっています。精密な作業環境に最適なシムとなります。
FA装置用 丸シム
こちらは、FA装置向けの丸形シムです。材質はSUS304で、公差がある穴及び外周部では高精度なワイヤーカット加工をしております。
この丸シムは、複数枚重ねたブランク材を厚めの鉄材で挟み込むことで、加工液噴射による加工中のブレを低減させながら加工いたしました。また、穴と外周部どちらにも公差がございましたので、穴を4回に分けて加工し、仕上げ精度が高くなるようにしました。
シムリング φ30×φ26×0.1~0.5mm
こちらは、さまざまな用途に活用できる丸い形状のシムです。ステンレス素材です。
0.1~0.5mmの板厚に対しプレス加工により製作しました。
特にM4系の電動ガンのレールシステム&アウターバレルを取り付けた時のガタつきを解消します。電動ガンM4系各のバレルロックリングとバレル基部の間に挟み込んで使用し実物や海外パーツを組込んだ時に生じるズレやガタ付きを解消します。