ベアリング用シムリングの役割・用途を解説!選定ポイントもご紹介
ベアリング(軸受け)は、回転運動や直線運動を円滑にし、機械の効率と寿命を大きく左右する重要な機構です。その精密な動作を実現するためには、適切なクリアランス(隙間)の確保が不可欠であり、その調整に用いられるのがシムリングです。本記事では、シムリングの基本的な定義、ベアリング調整におけるシムの重要性、ベアリング向けシムの最適な選び方について解説いたします。
シムリングとは?
シムリングとは、リング状の形をした薄い板のことです。機器や金型の隙間に挟んで高さを精密に調整するために用いられます。シム板とも呼ばれ、機械のガタつきを防ぎ、水平バランスを保つ重要な役割を果たします。
シムリングは、円形上のパイプやバルブ、ベアリング、ハブなど、あらゆるものの長さ・高さ・隙間精度を調整するために使われています。
特にベアリング(軸受け)においては、軸とハウジングの間、あるいはベアリング内部の部品間に介在し、クリアランスを精密に調整することで、ベアリング本来の性能を最大限に引き出すために用いられます。
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ベアリングとは?ベアリングにおけるシムリングの重要性
ベアリング(軸受け)は、回転運動や直線運動を円滑にし、機械の効率と寿命を大きく左右する重要な機構です。機械の効率性と耐久性を高める上で不可欠な部品で、その役割は多岐にわたります。
第一に、摩擦抵抗の低減です。軸とそれを支える部分との直接的な接触を避け、転がり運動や滑り運動を利用することで、エネルギー損失を最小限に抑え、動力伝達効率を向上させます。これにより、機械の動作がよりスムーズになり、無駄なエネルギー消費を防ぎます。
第二に、回転運動の円滑化です。摩擦が少ないことで、軸は滑らかに回転し、機械全体の動作を円滑にします。これは、振動や騒音の抑制にも繋がります。
シムリングを用いることで、ベアリングのクリアランスを調整することが可能です。クリアランスが過大であると、軸の振れが大きくなり、異音や振動の原因となるだけでなく、早期の摩耗や損傷につながる可能性があります。
一方、クリアランスが過小であると、回転時の摩擦抵抗が増大し、発熱や焼き付きを引き起こすことがあります。シムリングを使用することで、これらの問題を回避し、ベアリングを最適な状態に保つことが可能になります。
ベアリング用シムリングの役割
クリアランス調整
ベアリングのクリアランス調整は、ベアリングの動作性能を最大限に引き出すために最も重要なポイントの一つです。適切なクリアランスに調整することで、以下のような効果が得られます。
・摩擦抵抗の低減
クリアランスが適切であれば、ベアリング内部の転動体と軌道輪の間の摩擦を最小限に抑え、スムーズな回転を実現します。これにより、エネルギー効率の向上にもつながります。
・発熱の抑制
摩擦抵抗の低減は、ベアリングの発熱を抑制する効果もあります。過度な発熱は、ベアリングの寿命を縮める原因となるため、適切なクリアランス管理は非常に重要です。
・振動・騒音の低減
クリアランスが不適切であると、ベアリングの振動や騒音が大きくなることがあります。精密なクリアランス調整は、これらの問題を解決し、機械全体の静音性を高めます。
・負荷分散
適切なクリアランスは、ベアリングにかかる負荷を均等に分散させる効果があります。これにより、局部的な応力集中を防ぎ、ベアリングの耐久性を向上させます。
軸を支持し、荷重を支える
ベアリングを機械に組み付ける際、軸方向の正確な位置決めは、機械全体の精密な動作を確保するために不可欠です。シムリングは、この軸方向の位置調整において、非常に重要な役割を果たします。
・正確な位置決め
シムリングを使用することで、ベアリングをシャフトやハウジングに対して、設計された正確な位置に固定することができます。これにより、他の部品との干渉を防ぎ、スムーズな動作を保証します。
・予圧管理
ベアリングによっては、適切な予圧を与えることで、剛性を高め、振動を抑制する必要があります。シムリングは、この予圧を精密に管理するためにも利用されます。
・繰り返し精度の向上
シムリングを用いることで、ベアリングの組み付けや分解を繰り返しても、常に一定の位置決め精度を維持することが可能になります。これは、メンテナンス性や部品交換の容易さにもつながります。
このように、シムリングはベアリングが性能を十分に発揮するために不可欠な部品であり、機械全体の信頼性向上に大きく貢献しています。
ベアリング向けのシムリングの用途
ベアリングの具体的な用途は下記のとおりです。
機械の稼働を支えるシムリング
機械においては、シムリングは部品のクリアランス調整、位置決め、高さ調整などを目的として広く利用され、スムーズな動作と部品の長寿命化、機械の組み立て精度向上、安定した稼働を支えます。一般的に、機械向けのベアリングは設計段階から高精度に製造されているため、調整用のシムリングが必要となるのは修理・メンテンナンスの場合がほとんどです。
>>機械用シムの用途・選定ポイントについて
釣り具向けシムリング
釣り竿のリールにもベアリングは使われています。シムリングはギアのバックラッシュ調整による巻き心地の調整、スプールの位置調整による糸巻きの調整、ドラグ機構の調整など、より個人の好みに合わせた調整を目的として使用されることがあります。市販のリールに対して、シムリングによって、より滑らかな巻き心地を実現することが可能です。
ヨーヨーなどの回転機構向けシムリング
ヨーヨーのような回転機構では、シムリングはベアリングスペーサーとしてベアリングのクリアランスを調整することで、回転性能を向上させることが可能です。より滑らかなトリックの操作感、回転性能のために、シムリングによる調整が行われます。
ラジコンの操作性向上におけるシムリングの役割
ラジコンの性能を最大限に引き出し、より滑らかな操作感を実現するためには、各部のクリアランス調整が重要となります。シムリングは、このクリアランス調整において有効な手段の一つです。
特に、サスペンションアームやステアリング機構といった可動部のクリアランスを最適化することで、不要なガタつきを排除し、ドライバーの意図がダイレクトにマシンへと伝わる、よりリニアな操作性を実現します。また、駆動系のクリアランス調整は、ギア同士の噛み合わせを適正化し、パワー伝達のロスを低減、スムーズで効率的な動きを実現します。
いずれの用途においてもより細部にまでこだわったセッティングを追求するために、特注のサイズ、厚みのシムリング、あるいは異なる板厚のシムリングセットを用いて、コンマ単位のセッティングをすることができます。
ベアリング用シムリングの選定方法
実際にベアリング用シムリングを選定する際に、設計者や技術者が考慮すべき重要なポイントを、材質、厚さ、形状・精度という観点から詳しく解説いたします。
材質の選定
ベアリング用シムリングの材質選定は、その性能と寿命を左右する最も重要な要素の一つです。使用環境、負荷条件、求められる機能などを総合的に考慮し、最適な材質を選択する必要があります。
・ステンレス
SUS304やSUS430などのステンレス鋼は、優れた強度、耐食性、耐熱性を兼ね備えており、多くの一般的な機器に広く使用されています。特に、水分や腐食性物質が存在する環境下での使用に適しています。
>>ステンレスシムリングの規格外サイズも対応可能!加工方法・製品事例もご紹介!
・焼き入れリボン鋼
高い硬度と耐摩耗性を有しており、高圧力がかかる箇所や、繰り返し荷重を受けるベアリングの調整に最適です。耐疲労性にも優れていますが、錆びやすいという特性があります。
・銅
優れた導電性を持ち、電気接点を伴うベアリングや、アースが必要な箇所に使用されます。また、比較的柔らかい材質であるため、相手部品への攻撃性が低いという特徴もあります。
・その他
用途によっては、鉄、アルミニウム、真鍮、リン青銅などの材質も選択肢となります。鉄は強度に優れ、アルミニウムは軽量性、真鍮やリン青銅は耐摩耗性やばね特性を持つなど、それぞれの材質が固有の特性を有しています。また、メッキを行うことで、耐食性や導電性などの特性を付加する方法もあります。
シムリングの主な目的が、クリアランスの微調整や高さ調整である場合、材質そのものの特性よりも、精密な板厚管理が重要となるケースが多くあります。このような場合、比較的安価な材質であっても、高精度な板厚で製造されたシムリングが選択されることがあります。
厚さの選定
シムリングの厚さは、クリアランス調整の精度に直接影響を与えるため、機械の設計要求に合わせて適切な厚さを選択する必要があります。
・クリアランスに合わせた適切な厚さ
一般的には、0.01mmから1.0mm程度の板厚のシムリングが広く使用されていますが、より微細な調整が必要な場合には、0.005mmといった極薄のシムリングが用いられることもあります。設計者は、ベアリングの型式や使用条件に基づき、必要なクリアランス調整量を算出し、適切な厚さのシムリングを選定する必要があります。
この場合、特注の専用サイズ、厚みのシムリングによる調整や、異なる板厚のシムリングを複数用いての微調整が可能です。当社ではこれらの特注シムリングに幅広く対応しております。
・高精度が求められる場合の両面研磨
特に精密機械や高精度な調整が求められる場合には、当社では、両面研磨という加工方法でより高い寸法精度と平面度を得ることができます。これにより、クリアランス調整の信頼性が向上し、ベアリングの性能を最大限に引き出すことが可能になります。
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形状・精度の選定
シムリングの形状と精度は、作業性と調整の再現性に大きく影響します。
・作業性を考慮した形状
ベアリングの分解や組み立ての頻度が高い箇所や、調整作業の効率化が求められる場合には、切り込みの入ったシムリング(C形シムなど)を選択することで、ボルトを完全に外すことなくシムリングの脱着が可能となります。また、ヨーヨーはCリングにより調整を行うことも多いです。
・調整の再現性を高める高精度シム
高精度なシムリングを使用することで、クリアランス調整の再現性を高めることができます。バリがあるシムですと、サイズや板厚が適切でも、最適な調整ができません。したがって、精度はメンテナンス時や部品交換時において、常に安定したクリアランスを確保するために重要な要素となります。当社では、そのような精密な要求に応えるため、特注サイズはもちろんのこと、バリが極めて少なく、高精度なシムリングを提供しています。
ベアリング用シムリングの選定は、機械の性能、寿命に大きく影響します。材質、厚さ、形状・精度といった要素を総合的に考慮し、使用環境や設計要件に合致したシムリングを選択することで、ベアリングが持つ本来の性能を最大限に発揮させ、機械全体の信頼性を向上させることができます。
特注シム製造センター.comが提供するベアリング向けシムリングのポイントとは
高精度な製品を提供する技術力(バリレスプレスなど)
特注シム製造センター.comは、長年にわたり培ってきた高度な加工技術により、高精度なシムリングを提供いたします。特に、独自の「バリレスプレス」技術は、プレス加工におけるバリの発生を極限まで抑制し、後工程の負担を軽減するとともに、製品の信頼性向上に貢献します。また、エッチング加工においては、微細な形状や複雑な形状のシムリングを高精度に製造することが可能です。
規格外にも対応する小回り対応力
標準的なサイズのシムリングでは対応できない場合や、特殊な形状、材質、板厚が求められる場合にも、柔軟に対応いたします。特注シム製造センター.comは、ワイヤーカット、プレス加工、エッチング、レーザー加工など、多岐にわたる加工方法に対応しており、お客様のニーズに最適な工法を提案することが可能です。小ロット生産から量産まで、ニーズに合わせたシムリングを単品から提供いたします。
シムリングの製品事例をご紹介!
シムリング φ30×φ26×0.1~0.5mm
こちらは、さまざまな用途に活用できる丸い形状のシムです。
ステンレス素材です。0.1~0.5mmの板厚に対しプレス加工により製作しました。
特にM4系の電動ガンのレールシステム&アウターバレルを取り付けた時のガタつきを解消します。
電動ガンM4系各のバレルロックリングとバレル基部の間に挟み込んで使用し実物や海外パーツを組込んだ時に生じるズレやガタ付きを解消します。
シムリング φ10×φ7×0.02~1mm
こちらは、さまざまな用途に活用できる丸い形状のシムです。
ステンレス素材です。0.02~0.05mmの板厚にエッチング加工により製作しました。
エッチングの為変形が少ない仕上がりになっています。
釣り具などリールのガタつき調整などのメンテナンスに最適です。
クリアな巻き心地になるようにメンテナンスください。
ハンドルのガタつき調整、ドライブギアのシム調整にシビアな調整が可能です。